baby blue eyes

それは魂の革変の物語。

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【伽羅孤ものがたり】 風よ炎と踊れ

ヤイシャは顔をあげた。
呼ばれている。
知らぬ気配ではない。
しかし、なぜ彼女が自分を呼ぶのか分からない。
しかもこれは………召喚だ。


次の瞬間、視界が変わる。
(私はなぜここにいるのかしら)
不思議そうに首をかしげたヤイシャに、対面した彼女は苦笑した。
この伽羅孤の主である紫野の魂を持つ、地上の本体ともいえる彼女。
彼女が風の神を求めていることは知っていた。
そして、彼女の知る者の中で、その条件に合うのは自分くらいであることも。
それでもやはり不思議なものは不思議で、この状況を心の底から納得できるまでには時間がかかりそうだった。
しかし、己が彼女の召喚に応じたのも事実。
「いいでしょう、契約いたします」
この伽羅孤を支える風の柱となりましょう。
ヤイシャは、言霊を使い契約を履行する。



炎が舞っていた。
七色を閃かせながら燃え上がるその炎は美しい。
けれど、あまりにも美しすぎてどこか畏怖の念をもたらす。
炎の中心で、紫乃は微動だにしない。
両腕を広げ、視線は上に向かっているが、ここではない場所を見ているその目はどこか虚ろだ。

アズマとヤイシャが対戦する際に作られたこの特殊なエリアであるからこそ、紫野の力の放出に耐えている。
もし今の彼女の力が伽羅孤の他のエリアに漏れ出したなら、瞬時で全てを焼き尽くしてしまうだろう。
それほどの力をふるう紫野にたいして、ヤイシャは更に力を送り続けている。
火を煽る風として、その力をより大きくするために。
一切容赦はしていなかった。

炎はますます大きく燃えさかる。
それは、紫野の命そのもののようだった。
既に、通常の力の放出ではない。
一瞬、炎が大きく弾け、それはこの空間を完全に、濃密に、埋め尽くすほどだった。
そして、静寂。

急速に収束した炎は、シャボン玉のように弾けて消えた。
倒れ伏した紫野に、急いでアズマが駆け寄る。
血色を失った彼女の体を慎重に抱き上げると、城へ飛んで向かう。
その一方、アズマは己の分身をそのエリアに残した。

もう一人のアズマがヤイシャに歩み寄ると、緩慢に彼女は顔を上げた。
「大丈夫です」
「しかし……」
ヤイシャの地上の本体は、力の放出と共にその第二チャクラ、丹田のエネルギーを失い、今はベッドに横たわっている。
「本当に、大丈夫です。
それに、他の二人も似たような状況ですし」
その言葉に、アズマは苦笑するしかなかった。
飛ばした意識の片隅で、アーシャスの気配が急速に高まるのを感じられた。
「うまくいったようだ」
「えぇ、そのようですね」

先ほどまで、アーシャスとその地上の本体である彼女は己たちの失われた魂の欠片を求め、彼女の心臓に降りて行っていた。
そしてそれは、紫野の魂の欠片を求める旅でもあった。
紫野とアーシャスは、愛し合っていた。
そしてお互いに、自分が彼に封印されること、自分が彼女を封印するという運命を受け入れ、実行した。
しかし、感情と理性は別物なのだ。
いつの世だって。
殺したくない、殺されることでこの人を悲しませたくない、その悲鳴は魂の欠片となり、お互いの体に突き刺さり、消えることのない傷を残し、かつ、己の魂を一部とはいえ失った。
あるいは、そのような傷を残したということは、せめて傷という形でもいいから、愛する人の気配を己の内に残したいという願いに依ったのかもしれない。
その悲劇も、今、終わりを告げた。
二人は死に、死ぬことで、己の魂を取り戻す。


生と死のドラマに関わることになったヤイシャは、己の両手をじっと見つめていた。
その様子にアズマが声をかけると、彼女は妙に透明な目で首をかしげた。
「不思議なんです」
子供のように頑是ない口調で、そうポツリと漏らす。
「私は、柱でした。闇の界に閉じこもり、ただ在ることで己の務めを果たしていました。
私は同時に、審判者の役割も担っていました。
それは私が誰よりも闇の質を持っていたから。
人は、私を鏡としてみます。
誇れる己であるならば、私はその者に微笑みかけます。
けれど、その者が己の影から目を逸らしている場合、私は漆黒の裁きの女神として立ちはだかります。
そして、その者を無言で糾弾します。
人は、自然に私を避けます。
そして私も人を避けました。
なぜなら、審判者が人と馴れ合ってはいけないからです。
私は己の役割を受け入れ、今までずっと一人で在りました。
けれど………」

「けれど、その役割も今は終えました」

「私はこれから、こうして他者と関わっていくのですね」


子供のような目をしていると思った。
けれど、彼女は確かに今子供なのかもしれない。
今まで経験したことのない事をしている、という意味で。

その時、伽羅孤の上空の結界に触れるものがいた。
気配が二つ。
強固なそれをものともせず、更に特殊結界さえ潜り抜け、ものすごいスピードで降りてきたそれは、地面すれすれで一瞬ふわりと浮いた。
それから、軽やかに地に降り立つ。
せめて挨拶なり先触れをしてくれないだろうか。
呆れた顔で、アズマはため息を吐いた。

「お父様!」
ヤイシャは彼を見た途端、顔を輝かせてその懐に飛び込んだ。
ルシフェルもまた珍しく、その唇に笑みを載せて瞳を和らげている。
天使は体の全体で彼女を抱きこむようにすると、その額にキスを贈った。
嬉しそうに声をあげて笑うヤイシャは、親に褒められて喜びを体全体に漲らせている子供のようだ。
ルシフェルが彼女を離すと、間髪入れず今度はレミエルが彼女を抱きしめた。
「よく頑張りましたね」
そう言いながら、優しく髪を撫でて同様に彼女の額にキスをする。
その光景を見たアズマの脳裏に、「親馬鹿」の三文字が点滅する。
さすがにそれを口に出すような愚かな真似はしないが。

彼は知らない。
通常、大きな何かが起きると、彼女はこの二人の天使のもとへ必ず向かう。
そして報告し、喜びを分かち合うのだ。
春分の日に、闇の界を後にした彼女はその後すぐにこの事もルシフェルとレミエルに伝えに行った。
しかし、三重の封印を解除した後彼女は伽羅孤に留まり続けていた。
彼らの称賛には、だからこの解除の事も含まれている。

長い、永い間、彼女は死んでいた。
愛する者たちと別れ、たった一人で在ることを己に課した。
その役割を終え、これからは今までとは違う形で他者と関わっていくだろう。
それを、この二人の天使が喜ばないはずがなかった。

言祝ぎ(ことほぎ)が、風となり彼女の周りを踊った。


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*** COMMENT ***

「(女同士のパワー、すごかった…)」by アズマ
(笑)

おへんじ

pyoさん

ぷはははは(笑
いえいえ、男同士の激突も迫力でしたよ!

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