baby blue eyes

それは魂の革変の物語。

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【伽羅孤ものがたり】 久遠のメロディ

封印は三重にも渡った。
最後の封印は、その肉体の胸から腹までを完全に覆っていた。
ビシリと重い音を立てて、封印が真っ二つに割れる。
そして、その喉と両手に鉄の枷として張り付いていた3つの拘束(バインド)が次々と弾けた。




彼女は緊張と決意の面持ちで前を見ていた。
「いつでもいいぞ。かかってこい」
相対する男性が、そう言うのに黙って頷く。

そこは伽羅孤という、地球をとりまくように配置された界の一つ。
美しい自然を誇る界であるが、二人のいる所は草木が生えず荒れ地の様相を呈している。
「そのため」に新たに作られたエリアだからだ。

彼女は、手の中の剣を見た。
細い鞘は白地に金の細かい装飾が施されている。
鞘を払うとき、鈴の音のような鍔鳴りがした。
現れた刀身はクリスタルのように透明で、しかしその中に金色の炎が宿っている。
その剣を感慨深げに見つめるのに、男性…アズマが尋ねた。
「矢張り戦うのは怖いか」
「いいえ」
彼女は即座に首を横に振った。
「いいえ。ただ……」
私は、儀式用の剣以外に剣を握るのが初めてなんです。
ましてや、戦うために剣を使う日が来るとは夢にも思っていませんでした。
そう言って小さく苦笑するのに、アズマは意外そうな顔をした。
悠久の時を生きてきた彼女である、今までに様々な経験をしてきただろう。
いくら神殿の奥深く傅かれて育ったとはいえ、これはあまりに箱入りではないだろうか。

漏れた思考に、彼女が笑う。
「私の守護存在が…『お前は巫女だから、俺が守る、お前は闘わなくていい』と」
それに……。
「それに、私は《柱》でした。柱はただそこにあり、一つと一つを結びつける者。私は、私の手と足を戒め、柱であることを課していました」

彼女の名をヤイシャという。
その名は永く封印されたものであり、また、新たに彼女につけられた名であった。
彼女の魂を持って地球上に生まれた者がいる。
お互いがお互いに影響を与えるが、肉体を持っている方が変化をすると、その変容はヤイシャを変える。
知識・力・経験……そういったあらゆる面でヤイシャはその人間に勝っているが、唯一勝てない点もある。
それは、肉体を持つが故の脆さに反比例する「変革」の力。


つい先日、その肉体から三重の封印を解き、その両手と喉のバインドも外したことで、ヤイシャは《柱》としての役割を終えた。
一つの役割を全うした今、新たな動きを始めるのは当然だろう。



「参ります」
右足を一歩引くと、彼女は剣を構えた。
腰を落とした構えは隙がなく、その手に剣を握るのが初めてとは思えない。
対するアズマが手にしているのは、その身長と同じ程の長さの黒い棒。
同じく重心を低くした彼から、重厚な闘気が噴き上がる。
それを合図にするように、彼女は風のように走り出した。

剣と棒が交わり、ぶわりと巻き起こった砂煙が一瞬二人の姿を隠す。
視界から彼女を見失ったアズマが視線を巡らせるのと同時に、背後からの殺気。
咄嗟に繰り出した棒によって、剣が弾かれる。
しかし、剣を押し返したと同時に鋭い白光が空間を切り裂いた。
魔法陣によって展開したそれを、棒術で描いた陣ではじき返す。

飛びのいたヤイシャの目に光が煌めいていた。
戦いが好きだった己の守護存在の記憶を完全に取り込んだ彼女は、既に楽しむことを知っていた。
素早い呪文の詠唱、右手も次々と印を結び新たな魔法陣が次々と展開される。

(これはこれは。)
アズマは朱雀尾尊。
武神である彼の認識を新たにさせる程度に彼女は強い。
にぃ、と唇を歪めて彼は笑った。
これはあくまでも戦闘訓練なので彼から先じることはないが、もしこれが戦場だったなら、もっと思う存分己の荒ぶる魂を解放できただろうに。

鋭い切り込みだったが、下から掬いあげるように剣の切っ先を変える。
その流れのまま彼女の首元を突こうとすると、キン!と高い音がして己の攻撃が弾かれた。
見ると、今まで持っていた長剣はそのままに、彼女の右手に短剣が握られている。
その短剣が繰り出した次の攻撃を弾く時は、ギィンと重い音がした。
細い腕で繰り出せる力などたかが知れている。
だから彼女は己の攻撃を力で補助し、男性に相対出来るだけの重さを剣に乗せる。
重心はずらさない。
腕だけではなく、体の全てで剣を持つ。
気を込めることで力を練り上げ、重く鋭くする。
記憶によって伝えられた男の戦い方から瞬時に判断して、己の戦い方を編み出す。

間断なく続く攻撃に、バチバチと放電が起きて空間がゆがみ始める。
それを遠くから見守っていた伽羅孤の住人達は青ざめ始めた。
お互いに神格レベルの存在だ、その二人がぶつかり合えばどうなるのか分かるようなものだが、これは想像を超えていた。
いくら特殊結界により空間が区切られ、こちらにその戦いの影響が及ぶことがないとはいえ、見ているだけで背筋が寒くなるのだ。

どれほど戦いが続いたか分からなくなるほどの時間が過ぎて、彼女は動きを止めた。
「満足したかな?」
アズマの問いかけに、にこりと笑う。
「そちらこそ。雲は晴れまして?」
アズマは虚を突かれたように瞬いた。
「大丈夫です。確かに、今彼は重大な局面にいるかもしれませんが、必ず帰ってきましょう。
紫乃様の杞憂が実現することはありません。
彼は死に、よりしなやかに、強く、再生します」
あなたもそれを経験したでしょう、とヤイシャは付け加える。

この伽羅孤の主の一人、アーシャス。
彼と、彼の本体は今己の欠片を拾い集めている。
最後の一つは、心臓。
命を支える重大な器官に残されたそれを取りに行くことを、アーシャスの伴侶である紫乃はひどく心配していた。
この状態が、紫乃を守護するアズマに気鬱をもたらしていたのは確かだ。

参ったな、見抜かれていたか。
苦笑するアズマに、ヤイシャは屈託なくニコニコと笑った。
「お相手を務めてくださり、ありがとうございました。
おかげで、剣を扱うことはかなり学べたように思います。
術の方は……」
そうね、と彼女は考え込んだ。
「いずれ、アーシャスにお願いいたします。彼となら、納得いくまで魔術での戦い方をできましょうから」
それを聞いた住人達は、頭を抱えた。
またこんな凄まじい戦いが繰り広げられるのだろうか?!と、そのことで頭がいっぱいになる。

「いいだろう。だが、紫乃とは軽々しく対戦してくれるなよ」
今や恐慌に陥りそうな住人達を横目に、アズマは苦笑した。
おそらく、この二人の女神が闘いあったなら、惑星の一つや二つ、簡単に吹っ飛んでしまうだろう。
それだけは避けなければならない。
その言葉に、ヤイシャは困ったように笑って首を横に振った。
「彼女は火、ここでは私は風。戦いの相性としてはある意味最悪ですので」
アズマは、その言葉に改めて二人の特性を考え、さすがにぞっとした。
紫乃はこの伽羅孤の主であり、その力は火。
ヤイシャは風であり、火の力を煽り増幅することができる。
「ぜ……ったいに戦ってくれるな」
虚脱感に襲われながら、彼はそれだけは言った。


剣を鞘に収めると、彼女はそれを身の内に仕舞った。
その仕草は丁寧で、その剣が彼女にとっていかに大切なものかを伝える。
「それにしても、なぜ今さら戦い方を学ぼうと思ったのだ?」
アズマの問いかけに、彼女は透明な笑みを浮かべた。
「私はもう、柱ではありません。
守られるだけの存在ではなく、己の手足で動けます」

「誰かを傷つけるためではなく、己が強くあるために、戦い方を知りたいのです」

笑う彼女の頬を、風が優しく撫でていった。



関連ブログ
pyoさん:なんくる主婦の年中わーばぐち
2009年05月23日 三神の戦闘訓練

勇者ひかりさん:心軽やかに夢をみつける シンム-
2009年05月25日 『虹旅』 アーシャス リハビリ




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テーマ:スピリチュアル - ジャンル:心と身体

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■三神の戦闘訓練 [追記有]

「カケラ探し」シリーズで出た、紫乃が燃えた特殊訓練場。ここは、他の場所とは完全にエネルギーを遮断する、草木もないすごく広いエリアです。このエリアの存在を教えてくれたのは、月花さんでした。「夢の中で、どうもアズマと対戦したようです。 私じゃあんな激しい戦い
2009/05/24(日) 19:37:45 | なんくる主婦の年中わーばぐち
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