baby blue eyes

それは魂の革変の物語。

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星降るように 雪降るように 淡の光




何者も存在しない静寂
皆が口をつぐんだ静けさ
人々が寝静まった後の静謐さ


それぞれが違うと気付いたのはいつだったのだろう。
主の部屋は想像していたとおりもぬけの殻となっていて、彼は翼を広げる。
黒い翼で翔ける黒い夜。
星もなく、月もない。
かつて己が生まれて育った世界とはあまりにも違うセカイ。
それでも、私たちは自らの意志でここへ来た。
命をも捨てる覚悟で………

どれほど飛んだだろう、やっと捕まえた気配に彼は音もなく地上に降り立つ。
「王、できれば供の一人くらいはお連れください」
振り返った彼は、穏やかに微笑む。
「こんな時間に私のわがままで振り回すのは可哀想だろう」
「何よりも大切なのは御身、そのことをお忘れなく」
くく、と彼が少しだけ笑う。
「お前がこうして来たのだ、それでよかろう」
「そういう問題ではありません」
思わず口調に呆れが混じったのは仕方がないだろう。

「何をしておいででした?」
「何もしていないよ。ただ……」
「ただ?」
「気がざわめいているような、不思議な乱れを感じただけだ」
思わず首を傾げてしまった。
少しの間周囲に集中してみても、特段何も感じられはしない。
それを見ていた王は、「そうか、私だけか」と静かに呟いた。

「よい、今日はもう帰ろうか」
「……それは」
「淡雪のようなものだ、必ず何かが起きるわけではない」
「今までも……こうしていたのですか」
「たまに……な。不可思議な予感めいたものが私を捉える事がある。
だがそれがいつ起こるものなのかは私とて分からん。
明日起きるのか、一万年後に起きるのか……」
「闇の王が何をおっしゃいますか」
ふ、と彼が淡く微笑んだ。
「私には分からないことだらけだ。
たとえば、人の運命などは私にも読み解けないほうが多い」
「自由意志の軌跡を予測できるものなどおりますまい」

気が付いたときにはただの会話になっていた。
これでよい、と思っていた。
二人で踵を返そうとしたその時に、視界の端に何かが光ったような気がした。
思わず振り返ると、どうした、と声がかかる。
「いえ、今なにか……思い違いなのかもしれませんが…」
ふむ、と王が優雅な仕草で腕を組む。
「もう少し待ってみるか」
「はい」


やがて、それは私たちに姿を現した。
ゆっくりゆっくりと、この闇を降りてくる今にも消えそうな小さな光。
思わず息を飲む私の傍らで、王はひどく冷静だった。
「まさか、このような所にまで人の魂が」
「たまにあるのだよ」
「王……」
「強く覇気に溢れ、けれどその力の大きさゆえに一度針が振り切れると止められるものはいない。
そういう者が降りてくることがある」
やがてその光を私は受け止めた。
手のひらのそれは、うっかりすると握りつぶしてしまいそうなほどに儚く弱い。
王が、私と手を重ねるようにした。
「眠れ人の子よ。
今は何も考える事はない
この闇の中で安らぎを得るがいい」

私がそっと手を開くと、その光はふんわりと地に降りた。
地に降りて、吸い込まれるように消えた。
ちょこりと双葉が芽を出す。
さわりさわりと葉が一枚、また一枚と生えてくる。
蕾はまるで小さな音をたてるように花開いた。
愛らしく咲くその様に、思わず頬が緩む。

「さて帰ろうか」
「そういたしましょう」
王の見事な黒翼が開かれる。
私もそれに倣うと帰る場所……神殿へと向かった。
最後に私が振り返った時、その花は星のように雪のように淡(あわい)の光を揺らしていた。


テーマ:天使 - ジャンル:心と身体

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